そのような環境下で発生したエラー,事故はどのように処理されねばならないか考えてみよう。
このことを明確にするために,例を示す。 症例
内服薬をカラー付き注射器に用意して,患者サイドにもって行き,挿入されていた胃管を通して注入しようとした。同じようなチューブで接続されていた静脈ラインにあやまって注入してしまった。直ちに開始された治療・蘇生術にも関わらず,その結果重大な障害を残すことになった。
この時,注入と同時に見られた患者の異常症状は直ちに報告され,救急処置が開始された.当然主治医,病棟責任者に報告され,病院長,メディカル・ディレクター等にも伝えられた(緊急事態への対応ガイドライン)。
現場における事故への対応
本院では事故の発生はIAUにも伝えられる。このような重大事故の発生に対しては,可能な限り早く患者治療 (被害の拡大防止)が責任者の手でおこなわれる。
誤投与された薬剤の名前,量,症状,治療の経過,家族への説明等全て診療記録(medical records)として保管される。場合によっては,証拠保全され裁判の資料として用いられる。
現場から医真会トップまでの縦の組織は,業務の円滑な遂行に責任を持っている。すなわち発生した事故に対して,設備・機器・manpower・管理を含めたなんらかに不都合があれば,これに関連する部署がそれなりの責任を問われるのは当然であり,そのことは社会的な正義のルールである。
本院では,他院とことなり別組織のIAUがある。多くのエラーを分析し,事故に結びつかない組織づくりをめざすとともに,事故の対応にも現場と協力して被害の拡大防止,再発防止に専念する。
IAUへ提出された報告書は,業務日誌や診療記録の一部として何らかの情報提供するためになされるものではない。IAUは独自の判断で,原因を究明して,再発を少なくして,患者を事故から守り,職員が事故に巻き込まれるのを防止する。そのためにエラーや事故の報告を受け,原因調査と分析を行う。
IAU事故hearingのまとめ
内服剤投与を注射器を使用して注入するのは日常的に行われており,取り違えエラーを避けるべくカラー注射器の使用が定められて,実際に使用されている。
新人教育にも取り扱いの規則の説明を含めて,行われている. さらにfeeding tubeからの内服薬注入に際して,tubeの先端位置の確認が小量のair注入によるbabbling音,もしくは陰圧による胃液逆流の確認を行うことで義務づけられていた(内服薬注入のマニュアル)。だとすれば内服薬のiv
line誤注入はほとんど起こりようがないといわざるを得ない。
内服薬を静脈注入薬と勘違いして静注したか,内服薬と自覚しながら注入のラインを取り違え,かつチーブ逆流テストを行わなかった場合に起こる事故である。内服薬を自分で準備していながら,注入するその時に静注薬と勘違いしてしまう,説明できない思いこみで事故に結びついたとすれば,ほんとに痛ましい。
iv-lineとfeeding tubeの形状を異なるものとして,側孔注入を不可能にするなどの,機器の改善は必要であろうが,それがなかったために起こった事故とは本質的に異なる事故であるとの認識は必要である。
こんな勘違いも人間であれば起こるのかもしれないが,誤れば死に結びつく処置を日常的に行っている専門職としての自覚を片時も忘れないプロであって欲しい。そのようなことが起こらない精神的余裕のある職場環境で仕事をさせてあげたい。
誤注入の責任
一部には,iv-lineとfeeding tubeの区別が出来ないことが原因かのような意見が大合唱されている。しかし,feeding
tubeの先端確認を行うという基本的なルールを守っていれば,誤投薬は気付かれている。この確認操作を小児科病棟が義務化していなければ,義務化していない責任は大きい。確認操作をオミットしたのであれば,この内服薬をiv-lineに誤注入する事故の主因は当事者のルール違反と判断できる。ルール違反は通常業務の中で厳しく問われねばならない。それが職業人としての倫理だと考える。
IAUの事故に対する責任
IAUは発生した事故に対して直接の責任は負わないし,負えない。 しかし,それまでに報告されたエラー報告,事故報告を分析して,見られた原因,潜在した背景因子に対して有効な防止策を責任を持って提言できたか,防止が行われるように働きかけたかに対して,社会的,道義的責めを当然負わねばならない。緊急事故発生の職員の行動指針が,現場に存在して,周知させられていたか.充分な指針がなかったとすればIAUの責任は大きい。
IAUはこのような事故から患者を守る安全管理のシステム(註)を現場とともに考えて行きたい.それが職員を事故から遠ざけることにつながる。
(註) 災害時の緊急対応システム,緊急事態への対応ガイドライン等医療の質を向上させるシステムにIAUは責任を持たねばならない.
以上のように考え,別紙の事故報告書の取り扱い案を提案する。 |